20.5. 保全と復元生物学
https://gyazo.com/8d24df53276d2b30a55a8a85fb213bbe
生物多様性の理解やその消失に対処することを追求する、目的のはっきりとした科学 保全生物学者は、種や生物群集に生じる進化的な適応が作用し続ける限り、生物多様性が保持されることを認識している つまり、保全生物学の目的は、単に個々の種を保護することでなく、生態系を保全すること 劣化した生態系を自然の状態に戻すための手法を開発するため、生態学的原理を活用する
生物多様性「ホットスポット」
https://gyazo.com/3f968484093dac9360f842cf4e389dbe
陸地面積の1.5%にすぎないが、そこにはすべての植物や脊椎動物の1/3が分布している
たとえば、キツネザル類(原猿類)のすべてはマダガスカルに固有で、50種以上のキツネザル類がそこに生息している 実際、マダガスカルに分布するほとんどすべての哺乳類、爬虫類、両生類、植物が固有種
生物多様性ホットスポットは、絶滅のホットスポットでもある 世界的な強い保全活動を要求する地域のリストの上位にランクされる
種の集中は、とても限られた地域において、多くの朱を保全する機会を提供する
しかし、ホットスポットの指定は、最も人目を引く生物、特に脊椎動物や植物に注目が集まりがち さらに、生物が絶滅の危機にある状況は、世界的な問題
生態系レベルの保全
従来の保全の試みの多くは個別の種を救うことに集中し、これは今も続いている
次第に保全生物学は、群集や生態系全体の生物多様性を保持することを目的にしている 森林やそれに近接した草原、湿原や川や川沿いの立地のような、相互作用する生態系の集合体
生態学的な原理を応用し、土地利用の様式を研究すること
目的は生態系の保全を、土地利用の計画に役立てること
生態系の間の周縁部は、自然か人間によって改変されたかどうかに関わらず、景観の重要な特徴
そのような生態系間の周縁部は、土壌特性や表面の特徴のように、固有の物理的な条件を持つ
また、独自の撹乱様式や撹乱強度がある
たとえば、森林の周縁部は強風にさらされるので、森林内部よりも風害で倒壊する樹木が多い
特有の物理的特徴のため、周縁部は独特の群集を示す
一部の生物は、底でしか見られない資源を必要とするため、周縁部で優占する
たとえば、オジロジカは森林と草原の周縁部に生息する灌木を採食し、森林が伐採され開発で撹乱された場合に、その個体群を拡大させる 周縁部は、生物多様性に正と負の両方の影響を与える
西アフリカの熱帯多雨林における最近の研究は、自然の周縁部の群集は、種分化の重要な場所であることを示している 一方、人間活動で形成された周縁部を持つ景観は、種が減少することが多い
大きく分断化された生育地の場合のもう一つの重要な景観の特徴
回廊は好適な生息域の狭い帯、あるいは小さな塊で、孤立化したパッチを連結している
人に影響がとても大きな場所では、人工的な回廊が建築されることもある
https://gyazo.com/083eb5998f0a6a688d046758bc01c611
回廊は分散と個体群の維持を助け、特に異なる生育地を季節的に移動する生物にとって重要
しかし、回廊は害を及ぼすこともある
たとえば、回廊を通じた病気の核酸は、生育パッチが近接して存在する小さな個体群にとって有害
生態系を復元する
生きている生物を用いて汚染された生態系を無毒化すること
復元生態学におけるおもな戦略の一つ
たとえば、古い採掘跡地や石油流出を浄化するために細菌が用いられてきた 研究者は、汚染された土壌から、重金属や有機汚染物質(たとえばPCB)のような有害物質を除去するために、植物を利用することも研究してきた いくつかの復元プロジェクトは、生態系をもとの自然の状態に戻すために幅広い目的を持っている
それは、植生を再生し、非在来動物を囲いで締め出し、川の流れを制限するダムを除去すること、など
米国では、現在数百の復元事業が行われている
最も野心的な取り組みの一つが、南中央フロリダにおけるキシミー川の復元プロジェクト
キシミー川はかつて、キシミー湖からオキチョビ湖にかけて蛇行して流れる浅い川だった
洪水によって、川の運ぶ栄養豊かな砂が氾濫原に堆積し、土壌を肥沃にすると同時に、川の水質も維持していた
1962年から1971年の間、米国陸軍の工兵部隊が166kmのだこうする川を、水深9m、幅100m、長さ90kmの直線の運河に改修した
この改修は氾濫原の開発を目的としたもので、約125km²の湿原を排水した
これは、魚や湿原の鳥類個体群に大きな負の影響を与えた
濾過機能を助け、農業排水を軽減させる湿原の機能がなければ、キシミー川はリンや他の過剰養分をオキチョビ湖からエバーグレイズの生態系やさらにその南にも運搬する
復元プロジェクトは、ダム、貯水池、流路改変のような治水のための構造物の撤去や約35kmの運河を埋め立てることを含んでいる
このプロジェクトの第1段階は2004年に完了した
復元された4451haの湿原には、鳥や他の野生生物が予想以上に戻ってきた
湿原は自然の植生で覆われ、釣りの対象となる魚が再び、川を泳いでいる
持続的な発展の目的
世界人口が増加し生活水準が向上するにつれて、生態系サービスに対する要望が増加し続けている これらに対する欲求は、気候調節や自然災害に対する防備などの生態系サービスを犠牲にした上で満たされている
明らかに我々は、自分たち自身あるいはそれ以外の生物圏の将来を、危険な道へと導いている
この構想の目的は、地球上の資源の責任ある開発、管理、保全に関して必要な生態学的情報を得ること
この研究政策は自然生態系や人口生態系の生産性を維持するための方法に関する調査や、生物学的多様性、地球の気候変動、生態学的過程に関する研究を含んでいる
持続的発展は継続的な研究や生態学的知見の応用だけでは達成できない
生物科学を社会科学、経済学、人文科学と結びつける必要がある
生物多様性の保全は、持続的発展の一面に過ぎない
その他の鍵となる要因は、人間の条件を改善すること
一般市民の教育、政治的な責務、国家間の協働が不可欠
生物圏を改変し、他の生物の存在を危うくする我々特有の能力を自覚することが、持続的な未来に向かった道を選択する上で役立つだろう